旬の食材
市場での値段の高さでは、おそらく5本の指に入る高級魚ですが、全米オープンテニスで準優勝を飾った錦織選手が帰国後会見で「ノドグロ食べたい」と言ったことで、一層名を上げました。標準和名はアカムツですが、島根県出身の錦織選手が言ったように、山陰地方など日本海側では「ノドグロ」と呼ばれていて、分かりやすいネーミングから、今や、全国的にもこちらの方が通りが良いようです。
北海道以南の日本各地、東シナ海の大陸棚や周辺部の斜面域に生息し、特に多いのは、山陰から九州にかけてです。
生態がほとんど分かっていませんが、平成25年、人口孵化に成功しました。今後研究が進み、養殖などが出来るようになれば、もっと手軽に食卓に登るようになるかも知れません。
旬は、「産卵期の夏」とも「水温が下がる冬」とも諸説ありますが、いつ食べてもおいしい魚です。「白身のトロ」と呼ばれるほど、白身魚の中では最も脂がのっている魚です。その為、刺身なら皮を炙った焼き霜造りがお勧めです。脂ののった身自体が美味しいので、シンプルな塩焼きにしても、又、新鮮なら肝もいっしょに煮つけても、絶品の一皿になることでしょう。
待ちわびた陽光の中、浜辺での潮干狩りは、春を謳歌する情景です。しかし、アサリの美味しい季節は、実は、春だけではなく、秋にも旬を迎えます。冬を除いて通年産卵しますが、特に、春と秋の産卵前に美味しさのピークがやってきます。
潮の満ち引きの差が大きいのは、月と太陽と地球の関係で、春と秋なのですが、昼に潮が引くのは、春なのです。そこで、潮干狩りは、もっぱら春の行事となった訳です。
日本中の汽水域に生息しますが、朝鮮半島・台湾など広く分布しています。
旨味の元であるグリコーゲンやコハク酸が豊富で、特に産卵前にはこれらの成分が増えます。
タンパク質量は少なめですが、貝の特徴として、内臓を含んだ、身全部を食べるため、ビタミン・ミネラルを効率よく取り入れることが出来ます。タウリンも多く含まれ、動脈硬化や肝機能の安定が期待できます。
以前蛤のチャウダーのレシピをご紹介しましたが、アサリに替えてお試しください。パスタ・酒蒸、佃煮・あさりご飯・バターやオリーブオイルとにんにくで白ワイン蒸し等、バリエーション豊かな食材です。
夏から秋の入り口あたりが最もおいしい。日本で食用にされているのは、アカカマス・ヤマトカマスですが、市場への流通が一番多いのはアカカマスで、一般に「カマス」と呼んでいるのは、これです。
タンパク質・ビタミン・ミネラルが豊富ですが、なかでもビタミンDが多いのが特徴です。
魚介類は、食品の中でもカルシウムが多く含まれていますが、その上、カマスはその吸収を助けるビタミンDを多く含むので、是非、この季節には召し上って頂きたい魚です。ちなみに、魚介類のカルシウムは、骨だけでなく身の方にも入っています。
水分が多く淡白な味なので、生食や煮つけよりも、焼き物に向いています。定番の塩焼きはもちろんの事、酒蒸し・ムニエル・一夜干し・から揚げなど旬の間、多彩に楽しむことができます。
どうしても生食という向きには、昆布じめをお勧めします。
9月ともなると、秋の魚がたくさん入荷してきます。
タチウオもそのひとつです。
見た目は、その名前の由来とおり日本刀のようで、ぴかぴか光って美しいのですが、実は、どう猛なフィッシュ・イーターで、イワシ類やイカナゴ、イカ類などを追いかけて食べます。タチウオ釣りの仕掛けに「てんや」と呼ばれるものあります。どう猛な性質を利用して、その「てんや」に、イワシやアジを1匹、丸のまま、くくりつけて、タチウオを誘うわけです。
体にはウロコがなく、「グアニン層」という銀色の薄い被膜に覆われています。このグアニン層は剥がれやすいので、店頭で購入の際、新鮮さを見分けるポイントとなります。すなわち、ぴかぴか光っている方が新鮮だという事です。
淡白な白身魚ですが、意外と脂肪分が多く、同じ白身魚のタイに比べて、約2倍含まれてます。只、魚の脂肪は、血液をサラサラにし、コレステロールを下げる効果があります。
東日本より西日本でおなじみの魚で、瀬戸内海から大阪湾で多く獲れます。
料理方法としては、刺身・塩焼き・唐揚・ムニエル・南蛮漬け等です。タチウオの内臓は、腹を開かなくても、頭を切り取ったところから、抜き出すことが出来ます。刺身の際に、一手間かけて、皮をさっとあぶると、身と皮の間にある脂の旨味を引き出すことができ、更においしくなります。また、3枚におろしてから、一夜干しにしても、絶品です。
ハモは、西の夏のまつりになくてはならない魚です。祇園祭や、天神祭では、昔からハモが食べられてきました。
旬は、初夏から秋にかけてで、「ハモは梅雨を吸って大きくなる」といわれるように、梅雨明けのハモは、身も太って、大変おいしい季節となります。
関東では、料理屋さんで食べるもの、と思われていますが、関西では、家庭でもおとし(湯引き)や、また、鍋物で、食卓に上がることが多いです。
関西、特に大阪では、玉ねぎと相性が良いということで、ハモの鍋には、不可欠です。
また、高級かまぼこの材料として使われることも多く、かまぼこ屋さんでは、残った皮を香ばしく焼き上げた後、醤油や砂糖で味付けし、細く切り、「鱧皮」として売っています。きゅうりと一緒に酢の物にし、夏の一品として重宝します。
料理方法として、湯引き・鍋・フライ・てんぷら・松茸の香高い土瓶蒸し等があります。
今月の特集レシピでは「なごり鱧の柳川風」をご紹介しています。写真にあるようないわゆる柳川鍋がなくても、フライパンで作って、お皿に盛りつけるという方法もあります。是非お試しください。
日本中の沿岸で獲れる魚です。
80年代後半には、400万トンもの漁獲高でしたが、平成21年で、6万トンに激減し、その為か、大衆魚の代表のようなイワシも、今や、鮮度の良い大型は高級魚となってきました。
400万トン獲れていた時、魚全体の漁獲量は約1,000万トンでしたが、現在の総漁獲量は、500万トンです。イワシの影響の強さが分かります。
イワシといえば、マイワシを指すことが多く、身体の側面に7つの星があるのが特徴で、体長は25cmほどになります。産卵前の秋が脂がのり、一番おいしい季節です。
ここ本場へは、大羽・中羽は千葉県・神奈川県・静岡県などから入荷されます。又、小羽は高知県、徳島県、和歌山県、三重県、大阪府と比較的近いところからやってきます。
青魚の特徴として、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸が多く含まれること、カルシウムやその吸収を助けるビタミンDも豊富です。ビタミンB2、B6、B12、E等も豊富で泳ぐマルチビタミンと言えます。
近年の流通により、いたみやすいイワシも新鮮なものが手に入るようになり、刺身で供されることも多くなりました。生姜や梅干しと一緒に煮たり、塩焼きのような定番料理の他に、ミンチにしてハンバーグにしたり、カレー・味噌汁の具、手開きし、油で炒め甘辛く味付けした蒲焼など、料理方法はバリエーションに富んでいます。
世界中で食べられていますが、今月の旬の食材レシピでは鰯とモッツァレラ秋ナスのインヴォルティーノをご紹介しています。イタリアのモッツァレラチーズとも相性抜群の手軽なイタリア料理です。サクッ・ジュワッとした食感が美味しい一皿です。
泉州のだんじり祭は、別名カニ祭。その名に恥じず、とにかくたくさんのカニをふるまうようですが、そのカニとは、ワタリガニなのです。しかし、最近は韓国及び中国からの輸入が減少し、ワタリガニの流通量は減る一方です。
標準和名は、ガザミで、北海道以外の日本中の海で獲れます。
購入の際には、重くて、甲羅が硬いものを選び、脚を縛った状態で買ったら、そのまま、蒸すか茹でて下さい。
蒸す場合は、甲羅を下にして約20分。茹でる時は深めの鍋で水から茹で、沸騰して約10分です。
他の料理方法として、パスタ・味噌汁・ブイヤベースなど、美味しい出汁を味わうものが多いです。ワタリガニのスパゲッティなど、季節到来となると看板メニューとなるイタリアンレストランも少なくありません。
脚ではなく、身、ミソ、内子がごちそうと言えます。
貯蔵物が終わり、各地の新物が出廻る季節となってきました。
9月に入っても、ここ大阪では残暑も厳しく、秋の涼風が待ち遠しいところです。とは言っても、確実に季節は移って来るようで、空の色や雲の形が変わり、そして、スーパーやデパ地下の野菜売り場には、サツマイモの売り場面積が広がってきています。「稔りの秋到来」という風情がいっぱいです。九州や四国から早生種が入荷し、新芋らしく色鮮やかな紅色の皮、香りが高く、瑞々しく、新鮮な甘みが特徴です。
甘さや貯蔵性を求めて品種改良してきましたが、主な食用品種に高系14号・紅アズマ・紅ハルカ・紅マサリ等があります。
焼き芋には、紅アズマや紅マサリ、さめてもおいしいのがなると金時に代表される高系14号、初冬に出廻る紅アズマは甘さ抜群です。
最近では、店頭でも品種を記載しているお店もあります。こだわって購入してみてはいかがでしょうか。
新物のさつまいもは、てんぷらや素揚げにしてその香を楽しむも良し、煮崩れしにくい特徴を利用して、煮物・カレーやシチュウにも大いに利用して下さい。
新芋はすぐに芽が出てきますので、長く置くことなく召し上がって下さい。
周年出回っていますが、お盆や月見といった行事には欠かせません。
家庭用には、むきやすいこともあり、大きめのものが人気のようですが、衣きぬかつぎには特に石川早生という小振りの品種が好まれています。
煮物にするのが一般的ですがコロッケやカレーなど、じゃがいもを用いる料理に使ってみるのも面白いです。インターネットで検索しても、200以上のレシピが載っています。個性的ではありませんが、その分、作り手のアイデアが広がる食材と言えます。
大きな特徴として、低カロリーである事、カリウムや食物繊維が比較的豊富な事があげられます。
カリウムは、むくみ解消・高血圧予防の効果が期待されますし、食物繊維は、生活習慣病予防に大いに注目されています。
野菜の中で、ナスほど光沢のいいものは、見あたりません。
「なす紺」という色を表わす言葉も、ナスの皮の誠に美しい紫から生まれました。
ナスの主な種類は、長卵形ナス・卵形ナス・丸ナス・長ナス・小丸ナス・米ナス等がありますが、主に、徳島県・岡山県・奈良県・大阪府等からやってきます。
地元大阪府のなにわ伝統野菜として、泉州水ナスと鳥飼ナスが認定されています。元々、熱帯性の植物で、水分が蒸発しやすい性質を持っています。ラップでくるんで10℃前後で保存するとよく、5℃以下だと低温障害を受け品質を損ないます。
インド原産といわれ、もともと熱帯性の植物です。
油と相性の良いナスですが、炒め物やてんぷらにすると、皮の紫色が映えます。
他に、焼きナス、煮物、漬物等便利に使えます。漬物にしておいしい水ナスですが、煮ものにしても柔らかくておいしいです。また、米ナスは煮くづれしにくく、コトコト煮込む料理にも向いています。今月の特集レシピは揚げ茄子のみぞれ煮です。是非ご参考になさって下さい。
簡単料理のひとつ。焼きナスに使うナスをピューラーで皮を引き、電子レンジでチンした後、少し濃い目の吸地につけ込み、すりおろした生姜をそえて召し上がってみてください。
電子レンジを使うので焼きナスのような香ばしさはありませんが、調理中暑くなく、まったりした食感と美しい出来上がりを楽しめます。冷蔵庫に入れて、翌日もおいしいです。
種をつくらず、朽ち木や枯れ葉から養分を取り、胞子で増えるきのこ。温暖湿潤な日本はまさにきのこの宝庫で、種類は6000種以上もあり、私たちの先祖は野趣あふれるきのこに親しんできました。
ナメコの天然物の旬は秋ですが、一般に流通しているのは栽培物で、ほぼ一年中店頭に並びます。ここ本場(ほんじょう)へは、三重県・長野県からの入荷が多く、生産しているところは、やはり山間部です。流通している形態は、生ナメコの真空パック又は、株取りのトレイ入りです。生ナメコの真空パックは冷蔵で流通していますので、家庭での保管も要冷蔵です。株取りの物の方がぬめりが少ないです。いずれにせよ、調理の際には、最初にさっと水洗いしてください。
調理方法としては、味噌汁等の実、鍋物、酢の物、和え物等です。真空パックのナメコは大根おろし和えに使われることがありますが、その際には、必ず、湯通ししてからお使い下さい。今月の特集レシピは揚げ茄子のみぞれ煮です。ナメコの食感が楽しめる一品です。
ここでは、ナメコを使った常備菜をご紹介します。作り方は次のとおりです。簡単に出来て、色々に使えます。お試しください。
醤油に砂糖とみりんを加えて、からめ煮汁を作り、火にかけます。
沸騰したところにナメコを入れ、とろ火で十分に煮詰める。からめ汁は少なめにしてください。また、ねばり気のある汁になりますので、吹きこぼれに気をつけて下さい。
美しい色・香高く、抜群の糖度、そして、房からちぎってそのまま、皮のまま食べられる葡萄として育成された品種です。
葡萄の品種改良はめざましいものがありますが、特に「種なし」「皮も食べられる」が最近の特徴です。
平成18年に登録されたシャインマスカットは、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」 の系統を受け継ぐ品種で、美しい翡翠色の皮ですが、その皮が、そのまま召し上がることが出来ます。
香高く、最高に甘い品種で、房からちぎって、そのままお口に運んで頂けます。
独立行政法人で育成された品種ですので、誰でもが栽培可能な品種ですが、まだまだ多くは出廻っていません。
流通量が増え、価格も安定し、よりお求め易くなっています。
化粧箱入りばかりではなく、家庭用も多く店頭に並んでいます。是非、この香・味・色をお楽しみください。
刀根早生柿(トネワセガキ)というのは、平核無柿(ヒラタネナシガキ)の枝変わり品種の事です。枝変わりについては、以前ご紹介しましたが、1980年に登録された比較的新しい品種です。
7月ごろからハウス物が出荷されてきますが、露地物が本格的に出廻るのが9月中旬からです。元の平核無柿と同じく、四角で偏平な形で、種はありません。甘みが強く、硬くなく柔らかすぎることも無く美味しい食感です。渋柿なので、渋抜きを済ませて出荷します。
いち早く秋を感じられる9月の柿は、おいしさひとしおです。
ナシの主な種類は、大きく青系と赤系にわかれます。青系には20世紀、赤系には、幸水・豊水等があります。9月に入ると、20世紀・豊水の入荷が増えてきます。ここ本場(ほんじょう)へは、20世紀は、ほとんどが鳥取県から来ますが、豊水は、福島県・鳥取県・新潟県等、全国からやってきます。
ナシの作付面積は少しづつですが、減少してきています。その理由のひとつに、生産者の高齢化が挙げられます。生産者の高齢化は日本の農業がかかえる緊急問題ですが、ナシ栽培についても例外ではありません。現在のナシ栽培は、皆さんが想像されているような、1本の大きな木で実をつけていくというのではなく、枝を低く広くしたいわゆる「棚作り」が増えてきているのも、ひとつにはそのような事情があるからです。
出荷の際には、実一つ一つのおいしさのタイミングを計り、高品質なものを選ぶと同時に、一挙に出荷するのではなく、安定供給に心をくだいています。生産者は常に技術を研いて、皆さんによりおいしいナシをお届けしています。
産地では、糖度センサーを導入していますが、店頭で選ぶ際には、果皮に張りがあり、20世紀梨などの青系のナシは少し黄色っぽくなったもの、また、豊水などの赤系のナシは黄金色から適度な赤みがあるものを選びましょう。保存は常温ですが、食べる際には少し冷えていた方がおいしいです。ナシは切り口の色の変化が少ないので、急ぐ時は皮をむいて切ってからラップをして冷やすと良いでしょう。
ヒラタネナシガキは、渋柿の代表品種です。渋柿は、収穫後、渋抜きをして出荷されるのですが、種がなくて食べやすく、果肉がやわらかく、ジューシーなのが特徴です。
9月中旬になると、入荷量が一挙に増えますが、ここ本場へは、主に和歌山県・奈良県から入荷されます。
ところで、渋柿の渋を抜くのと、柿が二日酔いに効くのと、キーワードはひとつです。
すなわち「アセトアルデヒド」です。
柿の渋味の成分タンニンは、アセトアルデヒドと結合しやすい性質を持っています。そこで、このアセトアルデヒドを柿中に作り出し、タンニンと結合することによって、渋味を感じにくくしているのです。これが渋抜きです。
二日酔いの原因は、アルコールが肝臓で分解された時に生じる、このアセトアルデヒドです。柿を食べると、そのタンニンが、アセトアルデヒドと結合して、体外に排出すると推測されています。その上、体内に吸収されやすい柿の果糖もエネルギー補充に役立っていると考えられます。
当ホームページでは、おかずの食材として、チーズや鴨ロースと取り合わせたレシピもご紹介しております。是非ご参考になさって下さい。
8月下旬ころから店頭に並んでいますが、9月に入ると本格的な入荷となってきます。
350~450gほどになる大きめの赤梨で、幸水と並んで生産量が多い品種です。
果肉がやわらかく、とてもジューシーです。甘みが強く、その上酸味のバランスが良く、全体として濃厚な味わいです。また、日持ちが良いのも特徴です。
甘みが強いとは言え、水分量が多いので、食べ過ぎない限りカロリーを心配する必要はありません。文部科学省の食品成分データベースによれば、日本梨は100gあたり43キロカロリーです。廃棄率を15%としていますので、大きめの梨を半分召し上がっても、80キロカロリー程度です。