HOME / かれんとOC / 2022年 Vol.104

かれんとオーシー


2022年 Vol.104 2022.03.15 発行
ヒスタミンによる食中毒の話

魚介類の食中毒には細菌によるもの、寄生虫によるものなどさまざまな種類のものがありますが、食中毒の中には一度原因物質が産生されてしまうとどれだけ加熱・冷凍しても防ぐことができないものがあります。それが、今回説明させていただく「ヒスタミン」による食中毒です。

1. ヒスタミン食中毒とは

通常、食後数分から30分くらいで顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなり、じんましん、発熱などの症状が出ます。重症になることは少なく、たいてい発症後6〜10時間で回復します。これまで国内における食中毒事例の届出で死亡者はありません。一見、食物アレルギーの症状に似ていますが、免疫反応によるものではなく、症状は一過性であり、食物アレルギーとは区別されます。このようなことからヒスタミンによる食中毒はアレルギー様食中毒と呼ばれています。

ヒスタミンによる食中毒は他の食中毒に比べて件数は多くはないですが、厚生労働省が現在公開している食中毒統計資料によると、平成12年以降毎年全国で発生しており、平成25年には缶詰や加工食品を取り扱っている会社が販売したツナ缶から、自社基準を超えるヒスタミンが検出されたとして、大規模な回収事例も起こっており、食品の安全上重要な問題となっています。

2. どのような食品が原因となるのか?

ヒスタミンを作るのは、ヒスタミン産生菌である人間の腸内細菌科に属する細菌や、海洋細菌に属するビブリオ科の細菌などが知られています。ヒスタミン食中毒は、細菌が直接的な中毒の原因ではないことから、厚生労働省の食中毒病因物質別分類では化学物質が原因の食中毒に分類されています。ヒスタミン産生菌がヒスタミンを作る材料にするのは魚の筋肉のヒスチジンです。ヒスチジンの量は血合いの多い魚、つまり赤身魚に多く存在するため、原因魚類として白身魚よりも赤身魚のほうが多く挙げられます。特に挙げられる魚類として、マグロカツオカジキブリサバなどがあります。そのため、ヒスタミン食中毒の原因となる食品は、ヒスチジンを多く含むマグロ・カツオ・カジキ・ブリ・サバなどの赤身魚及びその加工品が主な原因食品として報告されています。

また、赤身魚の加工品が原因食品となる理由として、調理施設での食材の温度管理の不備や切り身、開き、すり身等の加工工程における衛生管理、その後の保存管理が適切でなかったことによって、ヒスタミン産生菌が増えたと推測されます。なお、食品中にヒスタミンが産生されていても、外観や臭いに変化はありませんが、大量のヒスタミンが含まれている食品を食べた場合は、唇や舌先にピリピリとした刺激を感じることがあります。ヒスタミンは熱に強いため、一度産生されると通常の加熱調理では分解されず、食品に残ったままとなります。「加熱するから大丈夫」ではなく、「ヒスタミン食中毒は加熱では防げない」ことに注意してください。

3. 国内におけるヒスタミン食中毒の発生状況

保育園や学校が関係する大規模な食中毒が発生しており、平成27年には流通段階における食材の不適切な取り扱いが原因で87名が発症するヒスタミン食中毒が、平成30年には保育園で92名が発症する食中毒が起きています。大阪市内でも令和3年に集団給食施設からヒスタミン食中毒が発生しています。給食で提供されたマグロのパン粉焼きからヒスタミンが検出され、児童と職員含めた17名が症状を訴える事態となりました。

また、施設別では、給食施設における発生が全体の30%以上と多いのが特徴です。そのため、ヒスタミン食中毒は通常の食中毒に比べ1件あたりの患者数も多くなる傾向があります。

4. 予防方法は?

食中毒予防の三原則といえば「つけない」「増やさない」「やっつける」ですが、ヒスタミンは一度産生されてしまうと、加熱などの調理によって分解されないため、食品中で「ヒスタミンを増やさない」ことが一番の予防方法となります。

そのためには、事業者様には次のことに注意していただければと思います。

<参考>

〇厚生労働省 「ヒスタミンによる食中毒について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html

〇消費者庁 「ヒスタミン食中毒」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/topics/topics_003/

〇一般社団法人 東京顕微鏡院 「ヒスタミンによる食中毒」
https://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/foods/topics-foods/6960.html


~水仲・大阪本場PRの取り組み~

大阪市水産物卸協同組合

大阪市水産物卸協同組合(髙丸 豊理事長)では、令和3年12月18日(土)に、「チャオ産経仕入体験会」を開催しました。水産仲卸店舗にて仕入体験や市場見学を行い、組合員や大阪本場のPRを行いました。参加者は、その後、マイドプラザ2階の多目的ホールにて行われた抽選会に参加しました。抽選会の景品には、マグロの柵や明太子など水産物や、本場市場協会様よりご提供いただいたマスクメロンなどを用意した他、参加者全員に、おさかな絵画コンクールの入賞作品をデザインに取り入れたクリアファイルや、関係団体よりご提供いただいた物品をお配りしました。なお、昨年に引き続き、参加者を減らすなど、新型コロナウイルス感染予防に十分配慮し開催しました。


令和4年度 場内野球大会の中止

令和4年度場内野球大会については、新型コロナウイルスの影響により開催を中止いたします。


《資料室からのご案内》

業務時間は次のとおりです。

 ・土曜日以外の開場日
 ・午前9時~午後3時

【新刊案内】

令和元年青果物卸売市場調査報告(農林水産省大臣官房統計部)
『野菜情報』

1月:東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(令和3年11月)他

2月:日本初の「いちご学科」の創設 栃木県農業大学校
~100年先もいちご王国であり続けるために~

3月:ジューシー干し野菜?!
~身体と心と環境に良いことづくしの干し野菜~

(農畜産業振興機構)
『果実日本』

12月:スマート果樹農業の最新事情

1月:最近の優良品種の動向

(日本園芸農業協同組合連合会)
『全水卸2021』

11月:コロナは市場流通をどう変えたか
〜「eコマース」と「賑わい」は市場機能の柱〜

『全水卸2022』

1月:水産物流通の新たな時代
~産地市場の改革 10年連続日本一 銚子漁港の挑戦~

3月:「荷受会社からの脱却」に関する考察

(全国水産卸協会)
『アクアネット』

12月:魚の食べ方 新境地
~新たな味わい、手軽さ、楽しさ~

1月:魚の域産域消~細やかに集め届ける~

2月:水産資材の省石油&リサイクル
~負のインパクトを圧縮~

(湊文社)
『食と健康』

1月:世界に広がる うま味の知識と技術

2月:給食施設の食中毒対策 ~ウエルシュ菌を中心に~

3月:もっと知りたい 有毒植物による食中毒とその対策

(日本食品衛生協会)